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消費税インボイス制度 ~ 課税事業者・免税事業者それぞれの対応



令和5(2023)年10月1日より始まる消費税のインボイス制度(適格請求書等保存方式)について書きます。

 

制度の概要


インボイス制度とは、複数税率(標準10%、食品等の軽減8%)の導入により、取引に係る消費税率や消費税額を請求書等にハッキリと記載し、取引における消費税の正確性を高めることを目的にした制度です。

インボイス(適格請求書)には、次の6つの事項を記載する必要があり、売手は買手に交付した適格請求書の写しを保存する義務があります。
①適格請求書発行事業者の氏名又は名称及び登録番号
②取引年月日
③取引内容(軽減税率の対象品目である旨)
④税率ごとに区分して合計した対価の額(税抜き又は税込み)及び適用税率
⑤消費税額
⑥書類の交付を受ける事業者の氏名又は名称

では、従来の区分記載請求書等保存方式の請求書とどう違うのか?
②から⑥の事項は、同様の内容が従来の請求書にも記載が必要ですので、大きな違いは①の登録番号が追加されたことです。
こう書くと、「それだけか」と大したことのないように感じます。

 

インボイスを発行できる「適格請求書発行事業者」になる


インボイスには発行事業者の登録番号を記載しなくてはなりませんから、この登録番号の取得が必要になります。
消費税の課税事業者が税務署に「適格請求書発行事業者」になるための登録申請をすると、登録番号が記載された通知書が税務署から届きます。
登録申請書は2021年10月1日から提出可能で、インボイス制度が導入される2023年10月1日から登録を受けるには2023年3月31日までに登録申請書を提出しなければなりません。

 

インボイス制度導入による影響


消費税の原則的な計算方法は、預かった消費税から支払った消費税を差し引いた金額を税務署に納付する金額として計算します。

【例】
売上 880万円(うち消費税80万円)
仕入 550万円(うち消費税50万円)


80万-50万=30万円(納付すべき消費税額)


上記の例の50万円を差し引くことを仕入税額控除といい、預かった消費税(80万円)から差し引くのですが、インボイス制度導入後は、登録事業者が発行したインボイス(適格請求書)でないと、仕入税額控除ができなくなります。
ということは、免税事業者※はインボイスを発行できませんので免税事業者に支払った金額には消費税が無いのと同じで
80万-0=80万円(納付すべき消費税額) となり、50万円 納付すべき消費税額が増加します。


なお、免税事業者からの課税仕入に係る仕入税額控除には次の経過措置が設けられています。
2023年10月1日から2026年9月30日まで・・・仕入税額の80%
2026年10月1日から2029年9月30日まで・・・仕入税額の50%
上記の仕入が2023年12月5日に免税事業者からされたものとすると、
80万-50万×80%=40万円(納付すべき消費税額)となります。


※ 免税事業者になれる事業者(法人の場合は資本金1,000万円未満に限る)
・基準期間の課税売上高が1,000万円以下
かつ
・特定期間の課税売上高が1,000万円以下(当該期間の給与等の支払額が1,000万円以下でも可)


すなわち、一定期間の経過措置はあるものの免税事業者からの課税仕入は、納付すべき消費税額が増加します

 

課税事業者の対応


売手としては、「適格請求書発行事業者」になり登録番号を取得しておき、制度導入後は買手に交付する請求書に登録番号等の必要事項を記載し、その写しを保存する。
買手としては、仕入先を適格請求書発行事業者か否かを区分して経理しなくてはならなくなります。また、免税事業者への支払の場合、上記「インボイス制度導入による影響」に記載したように納付すべき消費税が増加することも考慮する必要があります。

 

免税事業者の対応


買手たる課税事業者はこれまでと同じ金額を免税事業者に支払っても税務署に納付する消費税が増え、負担増となります。そうすると課税事業者はその負担増を回避するため、支払金額を減らす、あるいは仕入先を免税事業者から課税事業者に変更することを考えるかもしれません。
こうなってはたいへんです。免税事業者は自己の技術を磨き、値引きされず、他に代替えできないよう力をつけるか、課税事業者となり「適格請求書発行事業者」になるかのいずれかしかないのです。
課税事業者になると、これまで納税義務がなかった消費税を納めなければならなくなり負担が増加します。この時に「簡易課税制度」というものがありますので、これを検討します。

 

簡易課税制度


基準期間の課税売上高が5,000万円以下の課税事業者の場合、簡易課税制度を選択できます。これは、仕入税額に関係なく課税売上に係る消費税のみで納付すべき消費税額を計算します。

【例】
手間請けのみの大工とすると、簡易課税の事業区分が第4種となり、みなし仕入率は60%となります。
売上 880万円(うち消費税80万円)
経費 220万円(うち消費税20万円)


80万円-80万円×60%(みなし仕入率)=32万円(納付すべき消費税額)


もし、原則課税なら80万円-20万円で60万円の納付となるので、簡易課税の方がかなり少なくなります。
課税事業者とならず得意先から消費税分の80万円を値引きされるよりは、32万円(原則課税で60万円)納税してもずっとマシです。


簡易課税制度にも注意が必要です。課税仕入をいくらしても納付すべき消費税額に関係ないため、多額の設備投資をした場合などは原則課税より不利になることがあります。

 

法人成りや個人事業主の変更


個人事業者が法人成り(資本金1,000万円未満)した場合や、親から子に事業承継(死亡による事業承継を除く)して事業主を変更した場合等には、基準期間の課税売上高が無いことから、一定期間免税事業者になれます。これまで課税売上高が1,000万円以上で課税事業者であった者でも消費税を納めなくてよくなるのです。しかしながら、インボイス制度の導入により、得意先から免税事業者が排除されるまたは課税事業者になるよう要請されることが考えられるので、課税事業者にならざるを得ないとなると、この免税期間のメリットを享受できなくなります。
このメリットを享受しようと法人成りや事業主の変更を考えているならば、急いですることです。

 

免税事業者が課税事業者になるか業種別の検討


パン屋さん、美容室、学習塾等で売上のほとんどが一般消費者の場合には、買手からインボイスの交付を求められることがほとんどないでしょうから、あえて課税事業者とならなくてもよいかもしれません。

建設会社・工務店等からの外注を請けるひとり親方や企業向けにフリーランスで技術を提供するような仕事の場合は、買手からインボイスの交付を求めらるでしょうから、課税事業者とならざるを得ない可能性が高いです。

不動産賃貸業は、居住用物件や土地(更地)を賃貸している場合はそもそも消費税が非課税なので考慮しなくて大丈夫です。店舗だと上記のような免税事業者の学習塾ならインボイスを求められませんが、課税事業者だとインボイスを求められるでしょう。駐車場やガレージは一般消費者が自家用車を駐車するためなのか課税事業者が業務車両を駐車するためなのかで変わるでしょう。立地がよければ、インボイスを発行できなくても契約してくれることもあると思います。

飲食店は、どういうお客様かによります。商用での利用客が多い店はインボイスを発行できなければ、お客が減少するかもしれませんし、個人利用客がほとんどの店はインボイスを発行できなくても影響ないでしょう。
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